歯科医院の新規開業について
現在、歯科医師として働いている人はとても多く、近年の歯科医師数の増加が問題になるほど、人気職業のひとつです。また、歯科医院の数も、2030年には、8万件以上になると予想されていて、コンビニの数よりも多く、全歯科医師の約6割は開業医(診療所の開設者または法人の代表者)という状況です。
なぜ開業している歯科医師が多いのかというと、理由は2つあります。まず1つは、勤務先が少ないため。通常の医師の場合は、病院の研修医として働き、勤務年数を積み重ね、独立開業をしていくという流れが多いですが、歯科医師の場合、研修を経て、いきなり独立開業という道が多いです。なぜかというと、歯科業界は、大病院が少なく、就職先がないため、研修を終えたら、独立開業の道を辿らざるえないからです。 2つ目は、少ない人数でも診療が可能なため。医師は、複数の診療科がある病院などに勤務し、ほかの医師や医療スタッフと連携しながら診療を実施します。これに対し、歯科医師は、歯科助手などの補助は必要なのものの、少ない人数での診療が可能です。狭い口の中に器具を入れ、歯や歯ぐきを的確に治療、処置するためにはこまやかな作業が必要で、視野を確保するためには舌をよけたり、バキュームという器具で唾液を吸い取ったり、むし歯で歯を削るときに水を吸い取ったりする作業が必要です。
通常はこの作業を歯科衛生士や歯科助手がおこない、歯科医師は治療に専念します。歯科医師が1人でやろうとすることは不可能ではありませんが、手は2本しかないので、治療のクオリティーを保つのは難しく、時間もかかってしまいます。「時間をかけてていねいにやってくれる」と患者さんは思うかもしれませんが、1人だからこそ時間がかかってしまうのです。
つまり、腕とともにある程度の経営手腕は必要だということです。信念を持ち、1人で一生懸命やってクオリティーの高い治療をしておられる歯科医師も知っていますが、患者さんのためには歯科助手がいたほうがいいのかなと思います。なので、独立開業しても、人手不足には困らないというわけです。
歯科医院が新規開業する前に知りたい年収とは
開業した後の年収っていくらぐらいなのでしょうか?リアルな統計をお伝えいたします。歯科白書という、歯科医師会が発行している本からの抜粋です。
開業歯科医を5ブロックに分けたときの月収平均です。(2007年)
0~20% —– 15,7万円
20~40% —– 76,3万円
40~60% —– 109,9万円
60~80% —– 153,0万円
80~100% —– 260,9万円
真ん中で109,9万ですが、実際の人数的なボリュームを表す、中央値では103万円です。年収で約1200万円。かなり高年収ですね。しかし場所によってはかなり厳しい現状もあり、地方で歯科医師が過剰な地域などでは開業医の年収500万をきる地域もあります。たとえ年収1200万だからといて安心してはいけない現状が実はあります。
歯科医師と会社員で何が違うのでしょうか?それは開業資金がかかるということです。
開業資金に平均4000~5000万かかっています。会社員の方は0円です。でも私たちは初めに莫大な資金を投資する必要があります。またあなたが家を買ったり車をローンで買うのであれば、クリニックの開業資金を含めて、1億越えの金額の借金をすることになるのは覚悟してください。なんにしても、莫大な借金をした上で成り立っているものであり、当然その4000~5000万のお金をしっかり返済しないといけないのです。
年収1200万と言ってもそれほど楽ではないですよね。ご自身で試算してみて下さい。5000万を金利等を考えずに単純に10年で割ると毎年の支払いが500万です。
①開業の現実を知る必要性
開業した時に上手くいけば良いのですが、上手くいかなかったらどうしますか?
そんなこと、考えたことなんて無いかもしれませんよね。しかしながら、誰もが実際に開業すると、恐ろしいほど良くも悪くもリアルな現実を突きつけられます。そう、私たちは、開業医の現実をまず知ることが最初の第一歩なんです。『そうは言っても、開業医の現実なんてよくわからない。』と思うかもしれません。開業したあとにどんなことがありどんな悩みを持つのか想像がつかないかもしれません。
それを今回、歯科界の統計などを交えて詳しく解説していきます。
歯科医院の新規開業は経営ノウハウがないと厳しい!?
これが開業歯科医の現状です。細かい計算は抜きに大雑把に書いている部分もありますが、認識として若い先生ほど知っておいて欲しいことだと思っております。開業してこんなんじゃなかったと後悔しても、人生のやり直しはできません。
だからこそ、周囲の人や一部の意見だけを鵜呑みにするのではなく統計や一般的な予測を基にした正しい認識をすることが本当に大切だと思います。あなたの知り合いの上の先生が『しっかりやれば開業したってぜんぜん大丈夫だよ!』とか『良い場所見つければ大丈夫だよ!』確かにその先生は大丈夫だったかもしれませんがあなたが大丈夫な確証は全くありません。将来、あなたの肩に家族の人生が大きくかかっているかもしれません。
ぜひ現実を直視しつつ、でも不安がらずに実力をつけることに注力して若いうちから成長していって欲しいなと思います。
先ほどのデータでも分かるように、開業して上手くいってる先生もたくさんいます。あとは、あなたが将来にどのグループに入るかが重要です。卒業後に、毎日、診療後に残って夜遅くまで形成の練習したり、休みの日に何日も時間やお金をかけてセミナーに通っていたり、そんな風に真面目に歯科の知識と技術の研鑽をした先生たちにこそ開業して上手くいって欲しいと思っています。
『真面目にやっているけど、開業して上手く為にはどうすれば良いのか分からない。』そんな悩みがもしあれば、日坂会のクリニックを見学に来てみてはどうでしょうか。
歯科医師の多くは歯学部を卒業後、主に歯科医院に勤務しながら技術を磨きますが、仕事をしているうちに、「この歯科医院では使っていない材料で、さらに高度な治療がしたい」など、やりたいことがでてくるものなのです。
もっとも以前は3~5年で開業するケースが多かったのですが、近年は、徐々に開業までの期間が長くなっています。歯科の治療が複雑かつ専門化してきて、開業までに学ばなければならないことが多くなってきたためです。
しかし、実際に開業するとなると、大変です。歯学部では歯の治療の仕方は学べますが、経営のノウハウは教えてもらえません。勤務先の歯科医院でも院長は経営や収入がいくらあるかなんて、教えてくれませんからね。
最近では新規開業をサポートする業者があり、お金を払えばホームページの作成や内覧会の実施、チラシ配布などをやってくれるようになりました。読者のみなさんも新規開業の歯科医院がのぼりを立てていたり、歯ブラシを配ったりしていてもらったことがあるでしょう。こうした業者はすごく繁盛していると聞きます。開業は歯科医の夢ですが、歯科医院の数が多い現在、競争も大変だということです。
さて、読者のみなさんにとっての関心事は何より、経営手腕と歯科医師としての腕は別物なのかどうかという点だと思います。
これはどちらともいえませんが、腕さえよければやっていけるかというと、それは難しいと思います。
なぜなら、歯科治療には家賃、水道光熱費、人件費だけでなく、材料費、歯科技工士に補綴(ほてつ)物(かぶせものや入れ歯など)を作ってもらうための技工料など、その他にも高額なコストがかかります。お金が入ってこないと患者さんにしてあげたい治療が、できないからです。
そうした意味では、スタッフが極端に少ない、例えば歯科医師が1人だけですべてをこなしている歯科医院がありますが、これは患者さんにとっては不親切であると思います
どの業界も現代は人手不足です。この人手不足をどう解決して経営していくのかが今後の大きな鍵となることは間違い無いでしょう。
参考記事
https://mmpartners.info/dental/kaigyou/13.html
https://mmpartners.info/dental/kaigyou/03.html