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歯科医院の数が10年で1000近く増えたワケ
街中を歩いてみると、歯科医院は明らかに多い。これには、いくつかの理由がある。まず、歯科医師国家試験の合格者は17年で1983名、ピーク時の10年には2408名となっており、毎年約2000名の歯科医が誕生している計算になる。歯科医の多くは定年のない個人事業主とみられています。引退は年齢ではなく体力的な事情によるものが多く、そのため歯科医は年々増えていると思われます。内科医や外科医の場合、必ずしも開業医にならずに大学病院や関連病院で仕事をするケースもあります。しかし、歯科医は大学病院などでの枠が少ないのでしょう。そうすると勤務医という選択肢もありますが、もともと個人事業主が多い歯科医院はあまり勤務医を必要としないのです。そこで、歯科医は必然的に独立開業の道を選び、コンビニの数を超えるほど増えてしまったというわけだ。しかも、歯科医院は比較的容易に開業できるという事情がある。医療機器などはリースで初期投資を抑えることができ、いわば参入障壁が低いのだ。また、歯科医院専門の経営コンサルタントの存在もある。コンサルから自由診療のインプラントやホワイトニング、美容歯科などのノウハウや宣伝手法のレクチャーを受け、利益率の高い施術を患者に勧めるケースもある。そのため、不透明な歯科医院の料金については不満や不信の声もあった。ただ、最近は歯磨き指導や虫歯を防ぐ予防処置に力を入れる歯科医院も増えており、健全性や透明性をアピールしている。各医院は、生き残りをかけて「虫歯治療よりも予防処置に力を入れています」などと特色を打ち出しているのだ。ちなみに、親が歯科医の場合は、子どもも同様に歯科医を目指すケースが多いという。そして、参入障壁が低いとはいえ、開業時は親からの金銭的援助がないと資金集めに苦労するようだ。歯科医院は利便性の高い駅前に開業するのがトレンドになっており、それも競争激化を招く要因となっている。それでも患者が増えれば問題はないが、日本の人口は2017年10月時点で1億2670万人(前年比0.18%減)と徐々にではあるが着実に減っている。
また、テナント代や設備投資に加え、詰め物金属などの歯材や人件費などのコスト上昇も経営を圧迫する要因だ。詰め物金属を使った治療は保険診療なので、患者ひとり当たりの利益は決まっています。しかし、金属資材が高騰しているため、負担がじわじわと重くなっているのです。今回の調査期間外の18年4、5月にも3件の倒産が発生しており、今後も倒産件数は「小規模医院を中心に増加していく可能性が高い」という。
歯科医院の数は言われているほど多くない件
歯科医師過剰問題の文脈で必ず語られる「歯科医院はコンビニより多い」という文句。これはれっきとした事実であるが、この文句には意味がない。コンビニの数が歯科医院の数を上回ったことなど無いからだ。そもそも歯科医院は、コンビニより多いものなのである。当たり前ですが、過当競争の中でも自分の理想とする診療ができ、経営もうまくいっているところは、「どこ吹く風」です。そんな歯科医院では、院長が歯科医という仕事に誇りを持ち、子どもにも後を継がせているところが多いです。一方、経営の苦しい歯科医院の悩みは深刻です。テレビや雑誌では、年収300万円以下の歯科医師が増え、「ワーキングプア」などといわれていますが、こうした事態を心配して「自分の子どもには歯科医師を継がせず、医師にしたい」などという話は実際によく聞かれます。
歯科医院とコンビニの数は?
現在の歯科医院数は、68,791件である。一方でコンビニの数は、55,404件。コンビニよりも歯科医院の方が13,599件、およそ20%多い。東京や大阪などの都市部に暮らしていると、どうしてもコンビニの方が多い印象を抱きがちだ。しかし、コンビニは1階のテナントへの出店が多いこと、歯科医院はそうでもないことを考えると、こんなものかという感じもする。
歯科医院よりも多いものを探す
「歯科医院はコンビニより多い」という事実は、センセーショナルである。しかし、歯科医療が持つポテンシャルを考えれば、むしろ歯科医院の数が足りていないくらいだと、個人的には思う。「歯科医院より実は多いモノ」を発見していきたい。それを調べたからといって何になるわけでもないが、意外に多いモノが世の中には溢れている。
言わずとしれた「美容師過剰」
私は歯科医師である。美容院に行き、仕事の話になると「歯医者ってコンビニより多いんスよね〜」「お互い厳しいスよね〜」という話を、十中八九振られる。申し訳ないが、美容師には言われたくない。美容院の数は現在231,134件と、圧倒的に歯科医院より多い。ちなみに、日本全国の信号機の数は208,061基なので、美容院に至っては信号機より多いという衝撃のデータもあるほどだ。
「神社」や「お寺」は歯科医院より多い
調べたなかで意外だったのは、神社の数だ。神社は全国で81,067件もある。神社は、歯科医院より12,276件多い。神社とは別に、お寺も全国に77,256件存在している。お寺も、歯科医院より8,465件多い。
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歯科医院の数は言うほど多くない
歯科医師は過剰であるというマスメディアの声を聞く一方で、現場では人手不足が叫ばれている。冒頭で書いた通り、歯科医療のポテンシャルは、全身の健康状態との関連をはじめ、こんなものではないと思う。超高齢社会に突入して久しい日本において、歯科医療の果たすべき役割は、ますます増えていくのではないだろうか。
1960〜70年代は歯科医が不足
患者さんにとっては、歯科医院の数は多いほうがいいことは、間違いありません。むし歯や歯周病は放置しておけば進み、歯を失う原因になります。「むし歯の洪水の時代」といわれた1960~70年代は歯科医が不足し、歯科医院の前には患者さんの行列が夜遅くまで続きました。歯科医院の数が多い今、このようなことはありません。「歯の調子が悪い」と思ったら、家の近くや職場の近くなど、かかりたいときにかかれる施設が必ずあります(そうした意味ではまさにコンビニ的といえるかもしれません)。また、歯周病治療や矯正治療やインプラント、審美歯科といった具合に歯科医院ごとに専門も違いますし、保険診療中心か自費診療か、といった違いもあり、複数の歯科医院の中から自分に合った施設を選べるのもメリットでしょう。問題はこうした中でどうやっていい歯科医院を選ぶかということです。経営の苦しいところでは収入を得るために、患者さんをたくさん診ようとして、流れ作業になってしまうこともあるでしょう。必要以上に高い治療をすすめてしまう可能性もないとはいえません。
しかし、患者さんの歯を守るために、信念を持ってクオリティーの高い治療を提案する歯科医もいます。高額の治療をお金のためにすすめているのか、患者さんのためなのかをどうやってこれを見分ければいいのでしょうか。正直、私自身にも明確には答えられないのですが、一つ大事なことは「歯科医師が親身になって患者さんのことを考えているかどうか」です。そして、そのことを言葉だけでなく「肌で感じられる」こと。 例えば家電を買おうとするとき、「こちらの商品がいいですよ」とすすめる店員さんの態度をよく見れば、売りつけようとしているのか、そうでないのかは、なんとなくわかります。歯科医院の選び方については別の回でも詳しく紹介していく予定ですが、まずは、このことを歯科医院選びの目安の一つにしていただければと思います。