歯科医院の開業はビジョンをもとう。

歯科医院の開業のビジョンのイメージ

5年先、10年先を見据えたビジョンをイメージしましょう

研修時代を終え、勤務医としてどこかの歯科医院に入局します。すると、徐々に独立し開業して、自分の診療方針を考え始める方もいらっしゃると思います。開業は結婚と同じで、それ自体がゴールではなく、スタートです。5年先、あるいは、10年先を見据えてビジョンをイメージして下さい。ビジョンとは、組織が目指す将来の姿です。

診療方針(コンセプト)をはっきりさせる

まずは、自分がどのような診療方針を示したいかを考えましょう。診療方針を最近はコンセプト(概念)ということもありますが、自分の築きたい理想的な診療所とはどのような所なのかを、患者様や、スタッフが共有できるようにはっきりさせましょう。例えば、「痛みの少ない治療」とか、「笑顔が溢れる診療室」など、何でも構いません。院長の考えをはっきり表に出すことで、患者様は数多くある歯科医院から自分の考えと合うところを選択するメリットがありますし。そしてスタッフに共有することで、意思統一し、チームとして歯科医院を向上させることができます。

歯科医院を開業する準備

情報収集

ビジョンがイメージ出来たら、まずは、情報の収集をしましょう。開業における経営セミナーや、経験者や知人等への相談、WEB検索や、デンタルショーへの参加をして、知識を得ましょう。多くの情報を頭に入れておかなければ、選択の幅が広がりません。また、いざ開業した時に、診療の腕がいいだけでは、経営者としては成功は出来ません。経営の専門家にアドバイスを受ける必要があります。そのため、ビジネス用語にも慣れておかなければ、税理士やコンサルタント等と話しをした時に、理解が深まりません。

開業までのスケジュール調整

・資金調達(金融機関相談、自己資金チェック)
・物件探し(集患のマーケティング、テナント見学)

・テナント契約開業日決定)
・金融機関決定(借り入れには事業計画書が必要)
・事業計画書作成
・歯科医師会相談

・内装(見積もり、詳細打ち合わせ、工事着工)
・設計を所轄保健所に相談
・設備選定(ユニット、X線撮影装置等機材決定)
・事業計画書の見直し修正

・届出書類事前相談
・人事(就業規則、スタッフ採用)

・内装工事完了
・ユニット等機材設置
・材料納入

・保健所開設届け
・保健所検査
・届出(厚生局)
・厚生局検査

・広告(挨拶、内覧会、ホームページ作成)
・歯科医師会入会

開業には、最低7ヶ月はかかりますので、少なくとも1年前から検討しておかないと間に合いません。

開業に大切なポイント

開業場所の選定

人が集まりやすい好立地には、既に歯科医院が数多く開業されていたりするので、ライバルが多いです。しかし、立地としては不利でも、繁盛している歯科医院も多くあります。それは、他院との差別化を図り、患者様の心を掴むポイントがあるからです。
ターゲット(富裕層、ファミリー層等)を先に定めて、マーケティング調査から立地を決めるのか、立地を選んでからその地域のマーケティング調査をし、求められる診療(訪問診療、小児歯科等)を行うのか、どうしたいのかを決めましょう。

事業計画書の作成

事業計画や資金計画等の作成は、開業後の経営状況の目安となります。金融機関との融資の交渉時にも必要な資料となりますので、可能な限り、綿密に作成しましょう。

医療機器の選定

過度な設備投資は控えることが大切です。開業時に借金を大きくしてまで、買わなくてはならないものなのか検討し、“必要な物”と“欲しい物”を区別しましょう。そのうち、資金が貯まった時に買うという選択肢もあるので、焦らず、身の丈に合ったものを選びましょう。

求人

開業時は、院長の人を見る眼が重要になります。オープニングメンバーの中に、悪い意味で一癖も二癖もある人がいると、スタッフ間で仲違いし、医院の雰囲気が悪くなるきっかけになります。今後、一緒に仕事をしてくれるスタッフは、院長にとっても患者様にとっても非常に重要です。経験、技術が不足していても、性格の良い方を選びましょう。技術不足、経験不足は時間が解決します。スタッフが育つまで、忍耐が必要ですが、時間を掛けて、院長の診療方針を理解してもらえられるように育てることが大切です。

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歯科医院の開業にあたって必要となるお金とは

歯科医院個人開設の場合の資金調達の流れ

・必要書類の提出
・融資資料作成
・初回打合せとヒアリング

・融資審査申込
・金融機関面談

・審査回答

・融資実行

必要書類の提出・融資資料作成・初回打合せとヒアリング

必要書類の提出としては、本人確認に必要な書類、直近のキャッシュフローを確認するのに金融機関が必要とする書類、ご開業場所の賃貸借契約を既に締結している場合の証明書、開業計画書(事業計画書、開業までのスケジュール)等が必要です。
金融機関は、当たり前ですが、「返済能力があるかどうか」を重要視します。つまり、開業計画書が返済の根拠がなくずさんであったり、院長自身の過去3年間の収支の流れから返済能力が問われます。そのため、事前の準備が重要です。

融資審査申込・金融機関面談

資料や開業計画書だけではなく、本人による言葉で開業計画を話し、返済能力があると金融機関に認められなければなりません。そのため、金融機関との面談前に、金融機関からよく聞かれる質問や想定される質問に対して、根拠を踏まえた説明の仕方など、本番に備えてシミュレーションをしましょう。

審査回答

資料と面談で返済能力をアピールしたら、審査の結果が伝えられます。融資可能であれば、融資を受けるための口座を開設し、ローン契約を結びましょう。

融資実行

ローン契約を結んだら、いよいよお金が入金されます。

設備投資資金

設備投資資金とは、医院を借りるための費用や、内装や外装、医療機器等の設備にかかる費用のことです。

家賃・敷金・礼金

どのような立地で、どの程度の規模の歯科医院を開業するのかにもよりますが、例えばビルにテナントを借りる場合、1カ月の家賃が50万円だったとします。、敷金と礼金、そして仲介手数料がおよそ50万円ずつかかるため、家賃が前払い方式の場合なら、契約月に、250万ほど必要になります。そして、1年間の家賃は、600万円かかります。

内装工事

ユニットを2台設置し、内装やキャビネット工事をする場合、およそ1500万円は必要となります。ユニットの台数がもっと増えるのなら、それに応じて開業費用は増えます。ユニットの台数によって、1日の患者数が変わるので、少なくすればいいというものではありません。歯科衛生士の採用人数等も見据えて、ユニット台数を決めましょう。
また、内装によって院内の雰囲気が全く変わります。壁紙の色やキッズルームを設けるかどうか等、ターゲットに合わせたものにしましょう。

医療機器費

医療機器のメーカーや機材の型によって、金額は大きく異なります。導入するものによってかかる総額は変わってきます。歯科診療ユニット2台で約700万円、滅菌システムに約200万、レントゲン設備に約750万円、バキュームシステムやエアーコンプレッサーなどにはそれぞれ50万円程度が必要です。また、これらに加えて、CTやマイクロスコープなどプラスαな機器もあります。

保険料請求システム

これは、レセコンのことです。必須のシステムではないですが、円滑に業務を進められるためには、あった方がいいでしょう。費用はだいたい60万円〜かかります。

消耗品

歯科材料やグローブやマスク、事務用品、トイレットペーパーなどの消耗品を一から揃えと意外とコストがかかります。そのため、必要な消耗品をすべて揃えるのにはおよそ150万円と見積もっておいた方がいいでしょう。

これらを、設備投資資金をトータルして、見積もると、およそ3500万は少なくともかかりそうです。

運転資金

運転資金とは、開業後の経営が軌道に乗るまでに、経営の予備資金や生活費として予備に持っておくお金です。開業直後は患者数がかなり少なく1日の予約は埋まりません。予約があったとしても、キャンセルされることもあります。十分な収入を得られるようになり経営が軌道に乗るまでには、数ヶ月の期間が必要です。
また、保険診療の収入は、診療を行った月の2ヶ月後に国から支払われるため、開業から2ヶ月間は、保険診療の窓口収入と自費診療の治療費しか収入源がありません。これらの理由から、開業から数ヶ月は十分な収入を得られないことが多く、預金を崩しながらの経営となります。この数ヶ月間を乗り切るためには、運転資金が必要であり、少なくとも1000万円は用意しておくのが一般的です。

その他広告費

広告費も設備投資資金の一部ではありますが、ホームページ作成をプロにお願いするか、自作するかや、チラシを印刷するかしないかで大きく金額が変わるので、設備投資資金とは別に考えます。ホームページやチラシをプロにお願いする場合は、約50万〜必要です。

開業時の必要資金は
設備投資資金(3500万円)➕運転資金(1000万円)➕その他広告費(50万)=4550万円
を最低限準備する必要があります